Louis CANE
ルイ・カーヌは 60 年代後半から 70 年代前半にかけて活発に活躍したフランスのスューポール・スュールファス・グループ(支持体・表面)の一員であった。このグループのメンバーは主に絵画に関する根本的な問題提起をおこなったことで知られている。彼らはそれまで当然のこととして、問題にもされなかった絵画を構成する様々な要素について作家の立場から分析し、作品を制作した。
この背景には、アメリカの作家達の影響が少なからずあったが、絵画の伝統が根強くのこっていたフランスの作家達は、その多くがあくまで絵画から離れることなく、絵画の問題を追求していった。しかし、いったん絵画の基本的な問題について一巡りした後には、実験的な性格の作品からさらにこれを展開していった作家、いわゆる絵画にもどった作家、に分かれていったが、ルイ・カーンはどちらかといといえば後者に属する作家といえる。しかし、彼の場合、ただ絵画を続けたというのではなく、表面に表象的表現のない単色の濃淡をあらわしただけの作品から少しずつ画面に単純な曲線的あるいは直線的なフォルムを表すようになり、やがてそれまでの単色の均質的な画面に荒いタッチで絵具を残す作品から、激しいタッチと、形態を画面に表現する作風に移っていった。
このころの彼の作品はデクーニングの作風に近似していたが、彼の場合それよりもむしろ、表象的表現を抑制してきた反動作用といったほうがより現実に則していると思われる。彼の作品にはセザンヌ、マチス、モネ、ヴェラスケス、ピカソをレファレンスにしたものがあるが、それは模作というよりも、これらの作家の仕事を追体験することにより得られた成果をとりいれ、自らの世界に新たな要素を導入しようとしたと言えるであろう。
彼の作品は、ベルギーフランス、ドイツ、オランダ、日本、アメリカその他の国の政府の公的機関、企業によってコレクションされているほか、世界中の多くの個人ギャラリーや、公的ギャラリーに所蔵されている。
【主なパブリック・コレクション】
Centre Georges Pompidou, France
MOMA New York, USA
Louisiana Museum, Denmark
Art Institute, Philadelphia, USA
Musee d’Art Moderne de la Ville de Paris, France
Musee d’Art Moderne de Saint-Etienne, France
Kunsthalle, Kohl, Germany
Musee d’Art Contemprain de Montreol, Canada
Musee d’Art Moderne de la Ville de Nice, France
Musee d’Art Moderne de Bielefeld, Germany
大阪国立国際美術館
北海道近代美術館
大原美術館