三島喜美代 Newspaper 99-N/Newspaper99-NG

三島喜美代 Newspaper 99-N/Newspaper99-NG《Newspaper 99-N》1999 古新聞 《Newspaper99-NG》和紙、鉄粉、発泡スチロール

戦後の復興期から高度経済成長期を経て発展し、豊かになった日本社会は、特に女性にとって以前とは比べようのない多様な生き方や価値観を育みました。女性というジェンダーの固定概念は薄まり、女性が活躍する時代と謳われる現代ですが、その背景には、様々な歴史、光と影があります。ギャラリーヤマキファインアートでは今までも女性アーティストの個展を数多く開催してきましたが、それぞれの作家との関わりを通して、必ずしも女性アーティストたちが正当な評価を受けてきたわけではないこと、彼女たちがアーティストとして自立するには多くの制度的・社会的・観念的な壁を乗り越えねばならなかったことを実感しました。一方で、彼女たちは、そのような不遇に対しても距離を置きながら独自に新しい表現を希求して、あきらめることなく発表の場を模索し、不屈の精神で様々な手法やスタイルを追究し続けてきたことも知りました。

こうした女性たちの時代背景や表現を振り返り、また「今」の女性ならではの表現を制作する若手作家にいたるまでの道程を問い直すことで、女性アーティストとその作品の評価がどのように行われてきたのか、そして彼女ら自身の意識はどのように変わってきたのか、美術と女性、それらを取り巻く社会的状況をふまえながら考察を深めてまいります。その第5弾となる本展では、戦後日本を代表する芸術家、三島喜美代を紹介いたします。

本個展では三島の作品の中でも「紙」、特に新聞をモチーフにした作品を中心に展示をいたします。その中核を為す《Newspaper 99-N》《Newspaper 99-NG》は1999年にINAXギャラリーでの個展「クレイジー・ペーパー」にて発表され、今回が関西初公開となります。1980年代頃から積極的に大規模作品に取り組んできた三島は、その流れに位置づけられる本作によって「インターネットによる新聞の危機」を表現したと言います。壁面にフラットに並んだ古新聞がひときわ異彩を放つ本作は、風化して最早意味を成さなくなった情報の残骸が圧倒するように迫ってくる一方で、過ぎ去った時代の証言者としての風格と静謐さをも醸し出しています。IT社会の訪れとともに必然性を失ったにも関わらず、未だに私たちのまわりを循環し廃棄され続ける紙媒体。そこに私たちが求めるのはもはや情報という内容物ではなく、物質としての、儚くも美しい「紙切れ」なのかもしれません。

近年、世界的な再評価の動きが著しく高まっている三島喜美代。関西初公開となる記念碑的な作品を中心にした本個展が、現代社会に何らかの光を投げかけることを期待いたします。


【主な個展】
2024「三島喜美代―未来への記憶」練馬区立美術館(東京)
2023「三島喜美代-遊ぶ 見つめだす 作り出す」岐阜県立現代陶芸美術館(岐阜)
2023「CADAN:現代美術 2023」ギャラリーヤマキファインアートブース(東京)
2022「三島喜美代展」銀座蔦屋書店 GINZA ATRIUM(東京)
2020「2020年度第4回コレクション展:特集 三島喜美代」京都国立近代美術館(京都)
2020「三島喜美代展」 ギャラリーヤマキファインアート(神戸)
2018「Works since the painting period :1965-」ギャラリーヤマキファインアート(神戸)
2018Anne Mosseri-Marlio Galerie(スイス)
2017「Early Works」MEM(東京)
2017「Newspaper99-NG」 ギャラリーヤマキファインアート(神戸)
2017フリーズ・ニューヨーク2017 ギャラリーヤマキファインアートブース(ニューヨーク、アメリカ)
2016Taka Ishii Gallery(ニューヨーク、アメリカ)
2015アートファクトリー城南島(東京)

【主なグループ展】
2024「Here and There and Back Again, Japanese Art 1964 – 2024」Nicolas Krupp Gallery(スイス)
2024「アーテイストに学ぶ世界のみかた」 芦屋市立美術博物館(兵庫)
2024グループ展「レリーフ彫刻から立体表現」ギャラリーヤマキファインアー(神戸)
2023「開館60周年記念RE:スタートライン1963-1970/2023,現代美術の動向展シリーズに見る美術館とアーティストの共感関係展」京都国立近代美術館(京都)
2023「第11回円空大賞展 共鳴ー継承と想像ー」岐阜県美術館(岐阜)
2023「台北當代2023」ギャラリーヤマキファインアートブース(台北)
2022「ACK(Art Collaboration Kyoto)」ギャラリーヤマキファインアートブース(京都)
2022「MOTコレクションジャーナルvol.2 」東京都現代美術館(東京)
2022「森の色」展 ギャラリーヤマキファインアート(神戸)
2022「ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に」ポーラ美術館(東京)
2022「戦後の女性アーティスト-1970~2017-」展 ギャラリーヤマキファインアート(神戸)
2022「Listening to Clay」Joan B Mirviss LTD(ニューヨーク)
2021「Metamorphosis and Evolution 変容と進化」emmy art+ (東京)
2021「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」森美術館(東京)
2019「ELLE LOVES ART」展(東京)
2019「こどもおとな―これ、なににみえる?」芦屋市美術博物館(兵庫)
2019「山村コレクション展」兵庫県立美術館(兵庫)
2019「台北Dangdai Art &Ideas」(ブース:ギャラリーヤマキファインアート)
2018「コレクション2: 80年代の時代精神ツァイトガイストから」国立国際美術館(大阪)
2018「三島茂司・三島喜美代」MEM(東京)
2017「クロニクル、クロニクル!」クリエイティブセンター大阪
2017「アートバーゼル香港2017」
2016「台北アートフェア2016」
2014「アイデンティティとオリジナリティ」兵庫陶芸美術館
2014「Currents:日本の現代美術(クリスティーズ香港)
2012「言葉と美術が繋ぐものー中原佑介へのオマージュ展」ギャラリーヤマキファインアート(神戸)

【受賞歴】
2022第11回円空賞受賞
2022第63回毎日芸術賞
2021令和三年度文化庁長官表彰
2019第5回安藤忠雄文化財団賞
2019Sardi per l’Arte Back to the Future Prize (イタリア)
2002焼津市長賞
2001山口県立美術館賞・市民賞、宇部市野外彫刻美術館
1996彩の国さいたま彫刻バラエティ‘96大賞
1989国際陶磁器展美濃'89陶芸部門銅賞
1988日本現代陶彫展’88金賞
1974ファエンツァ国際陶芸展 ゴールドメダル(イタリア)
1966関西独立展 関西独立賞
1965第9回シェル美術賞展佳作賞
1964関西独立展 関西独立賞
1963独立賞・須田賞受賞
【作者情報】
三島喜美代

会期2017年09月02日(土) - 2017年09月30日(土) 休廊日 : 日・月曜日
開廊時間11:00 - 13:00 / 14:00 - 19:00  [最終日は17:00まで]
会場ギャラリーヤマキファインアート
所在地〒 650-0022 神戸市中央区元町通 3-9-5-2F
問合せTEL: 078-391-1666  FAX : 078-391-1667  MAIL: info@gyfa.co.jp
アクセスJR ・阪神 元町駅 西口より徒歩 1 分
料金無料