展覧会
狗巻賢二展:線主義の射程 ― 思考するグリッド
2026年4月25日(土)ー 5月23日(土)
ギャラリーヤマキファインアートでは、2026年4月25日より、狗巻賢二(1943–2023)の軌跡を辿る展覧会「狗巻賢二展:線主義の射程 ― 思考するグリッド」を開催いたします。
本展は、戦後日本美術において特異な位置を占める狗巻賢二の実践を、当ギャラリーでは2014年より継続的に新作を紹介してきましたが、本展ではその歩みを踏まえ、これまでにご紹介してきた作品の中から選りすぐりを展示し、狗巻の思考と表現の広がりを振り返ります。
狗巻の制作において「線」は、単なる造形要素ではなく、世界の構造を測定し、知覚の基盤を問い直すための根源的な方法でした。1970年前後に展開された糸や針金による空間作品では、物体の提示ではなく、透明な空間に仮設された面や量が現出し、鑑賞者の知覚そのものに変容を促す装置として機能し、そこでは、線は空間を分断し再構成するベクトルとして働き、不可視の領域に新たな位相を立ち上げるものでした。
1970年代半ば以降、制作の場が平面へと移行してからも、その探究は一貫して継続されます。方眼紙や墨壷を用いたグリッドの反復的な描画は、「線主義」とも称される独自の方法論を形成しました。それは幾何学的秩序への単純な帰属ではなく、線を引くという行為の持続を通じて、世界認識の論理そのものを更新しようとする試みでもありました。
一見すると均質で規則的なグリッドは、実際には身体のリズムや時間の蓄積に由来する微細な揺らぎを内包しています。この差異の集積が、制度としての規則性からの逸脱を生み出し、画面を固定的な構造から解放された「思考の場」へと転換します。そこでは、線と線の関係性が絶えず更新され、生成し続ける時空が可視化されています。
没後、デジタル環境における均質なグリッドが視覚経験を覆う現代において、狗巻の実践が示した不規則な反復と身体性は、より切実な意味を帯びています。本展は、継続的に紹介されてきた複数のシリーズを包括的に提示することで、「線」の射程の先にあった思考の深度を再考する機会となるでしょう。







