丸橋光生(まるはしみつお)は1982年京都に生まれ、広島を拠点に活動する注目のアーティストです。視覚と認識をテーマに作品を制作し、わたしたちが普段何気なく行っている「視る」、「認識する」という行為について意識を向けさせるとともに、いかにわたしたちの認識が不確かなものかということを問いかけます。「認識は経験からなる」ということをキーワードに、彫刻を起点にインスタレーションや映像など、メディアを軽やかに飛び越えて縦横無尽に模索し表現してきました。
作品シリーズの一つである「Statues and Rods(像と棒)」において丸橋は、「立体的な閉鎖性(注1)」、「凝密性(コンパクトネス)(注2)」といった彫刻の特性とされる概念から出発し、彫刻に限らない「物」の「充実感」「充足感」といったものに問題意識を広げ、それらを毀損させることを試みるインスタレーションを展開してきました。また映像作品の「窓洗い」のシリーズでは、延々と窓を洗い続ける映像を映すことで、鑑賞者にモニターの中の世界と私たちがいる現実世界の境界面を意識させ、そして、物体にそれそのものを指し示す文字を貼り付ける「文字とイメージ」のシリーズは、イメージと文字が意識の中でささやかな衝突を起こし、愉快で奇妙な混乱を鑑賞者にもたらします。このようにして丸橋は一貫して通常の視覚体験からの逸脱を図ってきました。そしてそれが丸橋にとっても悦びだと言います。2021年11月には、広島市現代美術館での参加型作品《どこかの窓洗い》において、鑑賞者のスマートフォンやパソコンの端末上に作品を展開することで、コロナ禍における美術作品と鑑賞者とのコミュニケーションの新しいかたちを提示しました。
作品 © 丸橋光生
写真・解説文・編集 © ギャラリーヤマキファインアート
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