本堀雄二は、1958年に神戸市に生まれ、愛知県立芸術大学大学院で彫刻を専攻した後、長く地元神戸で教鞭を執りながら、意欲的に作家活動を続けてきました。神社の廃材を用いて制作を行う機会を得たことで、仏像と向き合う道を見出します。その後、2009年に開催された神戸ビエンナーレ、2010年東京INAXギャラリーでの個展において、ダンボールによる仏像を発表したことで世界のアートフェアなどで大きな注目を集めることとなりました。
使用済みのダンボールを張り合わせて生み出された仏像は、正面から見ると透過しているように見え、その姿はあたかも慈悲の光を湛えているかのようです。そして、鑑賞する角度を変え、横から見てみると、ダンボールの断層が生み出す複雑な面と線の重なりが立体的に浮かび上がり、量感さえも感じさせます。ダンボール・紙という素材そのものがもつ軽さと、像としてのボリュームが心地よい均衡を保つのです。
本堀は、こういった制作を通して、日常的に消費された物を「再生」することに重要な意味を見出しています。ただし、それは環境問題やリサイクルといった言葉で語られるものではなく、仏教の”輪廻転生”の概念に近いものであると考えています。その思いと素材の選択は、1995年に発生した大規模地震、阪神・淡路大震災を経験し、それ以降新しい材料を使うことに抵抗を感じる様になったことにも起因しています。
「捨てる紙あれば、拾う神あり。」という合言葉を携えた彼は、用途を終えたダンボールから人々が崇める神仏を作りだすというギャップによって、見るものの興味を刺激し、作品が放つ強さと尊厳によって、その心をとらえて放しません。
作品 © 本堀雄二
写真・解説文・編集 © ギャラリーヤマキファインアート
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