展覧会

狗巻賢二「Study Umber…。」

狗巻賢二「Study Umber…。」

2019年05月03日(金) - 2019年06月15日(土)

このたびギャラリーヤマキファインアートでは、狗巻賢二「Study Umber…。」を開催いたします。狗巻賢二は1943年大阪に生まれ、ガラスを立てかけたように見える糸の作品や、針金による立体作品によって、70年頃に一躍注目を集めました。ミニマル・アートを日本の風土に根ざして解釈、構成した作品は、「第10回日本国際美術展:人間と物質」(1970年/キュレーション:中原佑介)や「第8回パリ青年ビエンナーレ」(73年)に出品されるなど、もの派に比肩する重要な指針のひとつとして高い評価を得てきました。70 年代半ばからは平面で発展的に思考を重ね、方眼紙の方形を色鉛筆で塗り分ける作品や、墨壷でグリッドを描いた作品、カンヴァスに白色の絵具を厚く塗り重ねた《ある種プリミティヴな観念的時空》シリーズなど、ミニマルでありながらもゆらぎを感じさせる独創的な作品が生まれました。美術評論家の中原佑介に「線主義」と呼称されたように、狗巻は一貫して「線をひく」という単純な行為の繰り返しが結果=表現としてあらわれる作品を制作し続けています。
「umber(アンバー)」とは、土壌に由来する褐色の顔料のことを指します。最新作《Burnt sienna, Raw umber》(2019)は、黄褐色(sienna)と赤褐色(umber)という二種類の褐色の線を、狗巻が長期間にわたり黙々と重ねたことで生み出された作品です。ひとつひとつの線は、かたちや意味が生じることがないように、周到にあるいは気取らずに画面に置かれていきます。次第に線はキャンバスの上で重なり合って色彩の陰影をつくり、作者の意図を離れて律動をはじめます。さらに、画面を垂れていく絵具は、禁欲的な制作態度とは対照的に、万物の流動を感じさせる表現主義的な印象を見る者に抱かせます。現代を鋭く見つめる狗巻は、素材や技法を変化させながら、「人間と物質」の今日的な関係を本作で提示しようと試みています。
弊画廊での前回展(2015)から4年ぶりとなる本展では、大胆かつ繊細な線が何層にも重なって響き合う絵画作品を中心に展覧いたします。素材と色彩との新たな対話を見せる作品群を、是非この機会にご高覧くださいませ。(鈴木和寛)