展覧会
キリコ展「わたしの子宮」
2026年3月4日(水)ー 2026年4月4日(土)
この度ギャラリーヤマキファインアートでは、写真家キリコによる新作を発表いたします。弊廊にて3回目の個展となります。
本展は、2025年3月4日に作家自身が経験した子宮摘出手術を契機に制作された、「セルフポートレイト」と「オブジェ」の二つのシリーズによって構成されます。
臓器を失うという出来事は、単なる医療的処置にとどまらず、身体感覚や自己認識に静かな変化をもたらします。しかし時間の経過とともに傷は癒え、日常は何事もなかったかのように続いていきます。周囲に気づかれることもなく、ときに自分自身でさえ忘れてしまいそうになる——キリコはこの曖昧な感覚に着目し、喪失の後に立ち上がる「生の実感」を見つめます。
手術前後に撮影されたセルフポートレイトでは、本来写真に写ることのない臓器の不在が、連続する時間のわずかな差異として示されます。それは、可視化できないものをいかにして表現しうるのかという、写真というメディアの本質に関わる問いを静かに投げかけます。
一方、オブジェシリーズでは、すでに廃棄された自身の子宮を医療写真を手がかりに立体として再構築しています。失われた存在を物質として呼び戻すこの行為は、再現であると同時に、喪失を受け入れながら生きていくための思考のプロセスでもあります。写真と立体を往還することで、本作は不在の身体をめぐる新たな知覚のあり方を提示します。
キリコはこれまで、親密な関係性や女性の身体を主題に、個人的な経験を普遍的な問いへとひらいてきました。本展においても極めて私的な体験は、身体の記憶、存在の連続性、そして「生きる」とは何かという根源的な問いへと接続されています。忘却へと向かう時間のなかで、失われたものの記憶をどのように現在へ留めることができるのか。
本展は、喪失と再生のあいだにある静かな気づきを通して、私たち自身の身体と生についてあらためて考える機会となるでしょう。
《関連企画》
キリコ(本展作家)×竹内万里子(批評家・作家)による対談
本イベントは予約制となりますので、下記よりご予約くださいませ。
日時:2026年3月28日(土)16:00 – 17:00
会場:ギャラリーヤマキファインアート
入場:無料
竹内万里子(批評家・作家)
1972年、東京都生まれ。批評家・作家。早稲田大学政治経済学部卒業、早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了(芸術学) 。2008年フルブライト奨学金を受けて渡米。東京国立近代美術館、国立国際美術館客員研究員を経て、現在、京都芸術大学教授。国内外の作品集等に幅広く寄稿するほか、数多くの展覧会を企画。単著に『矛盾の海へ』(赤々舎、2025年)、『沈黙とイメージ 写真をめぐるエッセイ』 (赤々舎、2018年) 、企画編集・翻訳にジョナサン・トーゴヴニク『あれから── ルワンダ ジェノサイドから生まれて』 (赤々舎、2020年)、I’m So Happy You Are Here: Japanese Women Photographers from the 1950s to Now(Aperture, 2024) など多数。京都府在住。









